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解ったかも、新型コロナ❗

週間文春【阿川佐和子のこの人に会いたい】

生物学者福岡伸一氏(青山学院大学教授・米国ロックフェラー大学客員教授)との、対談で、3/11にブログで紹介した、続編です。

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コロナ問題がここまで本格化する前の2月中旬、本質を見事に捉えていた福岡ハカセにあらためて、新型コロナウイルスとは何者なのか、滞在先のニューヨークより、リモート対談でうかがいました。

 

阿川:

    前回の対談時は、まだコロナ問題が起きてすぐくらいのタイミングでしたが、検査の難しさや、誰もが保菌者になる可能性があるという話など、あのときおっしゃっていたことのほとんどが当たっていましたね。さらにあのときは、「数年後には日常的な病気になる」とおっしゃって、実際にその方向に向かってますね。

 

福岡:

    ただ、ここまで世界的な大騒ぎになることまで予見できていなかったので、その点は私の不明でした。感染者、死者がこれだけ増えているので、対策はしなければいけないんですけど、前も少しお話ししたように「新型」という言葉に惑わされすぎてるような気はいまもしています。ウイルスに対する理解を深めることによって、もうちょっと冷静な対応があってもよかったんじゃないかと。

 

阿川:

    ウイルスに対する理解って?

 

福岡:

    まず最初に大きなことからお話しすると、今回のコロナウイルス問題が教えてくれた第一の教訓は、なぜ人間に男と女がいるのか、ということなんです。

 

阿川:

    そっち?  それ、コロナウイルスと関係あるんですか?(笑)

 

福岡:

    大いに関係あります。これまで人類はペストやスペインかぜなど、幾度となく疫病にされされても、生き延びてきました。それは弱肉強食を原動力とするのではなく、多様性を内包する種のほうが生き延びられることを知らず知らずのうちに学んできたからなんです。

 

阿川:

    ハカセは、その種が生き残るのは強いからではなく、適応力が高かったからだ、といつもおっしゃってますよね。

 

福岡:

    それと同じで、どんな病気が来ても、運悪く重症化する人がいる一方で、軽症で済む人もいるから、人間は種を絶やさなかった。それは、男女がいて、絶えず遺伝子情報や文化情報、そのほか様々なものを混ぜ合わせたり分けあったりしてきたことによって、多様性が生まれたからです。進化の長い過程を見てみると、生物が生まれた約三十八億年前から最初の二十五億年は女性しかいないんですね。

 

阿川:

    二十五億年もの間、アマゾネス状態だったんですか!?

 

福岡:

    もちろん、人類が生まれる遥か前です。我々の祖先である生物はメスはメスを産む、単為生殖でやってきました。

 

阿川:

    ミジンコと同じね。

 

福岡:

    そう。でも、全てメスだと、みんなが同じ性質を持っているので、何か一発、病気が来たりすると全滅してしまう可能性があるわけです。だから、ちょっと変わりものをつくっておいたほうがいい、と女子は考えてオスを生み出しました。

 

阿川:

    考えるなあ(笑)。私はミジンコを飼っていたことがあるんですが、ミジンコって通常はメスがメスを産むんだけど、水質が悪化したり水量が減ったりすると突然、オスを産む。生まれたオスとメスの間にできた卵は、通常と違ってカプセルに入っているから生き延びられる。それで環境が良くなったときに「いまこそ孵化するときだ」となるから、その種は絶えることなく続くんですよね。ミジンコはたまに出てくるオスのおかげで種が守られるって話と、ハカセのおっしゃってることは同じですか?

 

福岡:

    同じです。それがオスの出発点ですね。

 

阿川:

    いざというときにしかオスは役立たないけどね(笑)。

 

福岡:

    「いざ」はいつ来るか分からないし、「いざ」が来てからでは遅い場合もあるから、常日頃から色んなバリエーションを生み出そうとしたんでしょう。結果、オスの地位が向上してきました。

 

阿川:

    いざというときだけに必要だったものが、いつの間にか常備薬になったのか(笑)。

 

福岡:

    そうそう(笑)。

 

阿川:

    つまり生物は逆境にさらされても潜在意識として種を引き継ぐために生き延びる方法を持っているはずということ?

 

福岡:

    おっしゃる通りです。生物学者としては、そんなに慌てふためかなくても大丈夫だよ、と言いたい。

 

阿川:

    とはいえ、科学の進歩によって、本能よりもデータや情報に頼り切ってる側面はありますよね。アメリカのトランプ大統領も「科学の力を結晶してコロナに打ち勝つんだ」と言ってるけど、打ち勝つことができるのかどうかも疑問だし、そもそも打ち勝つという考え方自体が本当に正しいのか私は疑問に感じているんですけど。

 

福岡:

    まさしくそれが第二のポイントです。今回の騒動で学ぶべきことは、ウイルスに打ち勝つことはできないし、打ち勝つべき敵でもないんです。

 

阿川:

    ウイルスは敵じゃないの!?どうして?

 

福岡:

    前回の対談でもお話ししましたが、ウイルスは自分の細胞の一部がちぎれて飛び出したものなんですね。コロナウイルスはゴルフボールにティーピンが突き刺さったような形状をしているでしょ。あのボールのおまんじゅうの皮みたいな部分は人間の細胞の皮なんです。それはウイルスが自分の細胞から飛び出すときに、ヒトの細胞の皮をかぶって外へ飛び出しているので。

 

阿川:

    ずるい、私の洋服を着て家出したのか!(笑) 前回ハカセは、ウイルスというのは、元々人間の細胞だったものが他の生物に渡ったりした結果、不良になって戻ってくるから、身体に変調をきたすって。

 

福岡:

    あくまで、不良になるウイルスもあるって話なんですよ。むしろ、多くのウイルスは我々からすると帰ってきたかどうかもわからないんです。

 

阿川:

    親である私たちと衝突しないでおとなしく家に戻ってきた子たちもいるってこと?

 

福岡:

    ええ、さらに言えば、外をぐるぐる回っているうちに、外の有益な情報を親に伝えていることもある。覚えておいていただきたいのは進化の仲介者として種と種を繋ぐ役割を果たしているがゆえにいまも生き延びているということなんです。

 

阿川:

    ウイルスって役に立つ部分もあるんだ・・・・・。

 

福岡:

    むしろ役に立っている部分のほうが多いでしょうね。たまたま不調をもたらす、新型コロナウイルスのようなものが悪役になってしまうだけで。遺伝子情報を違う種から違う種に運べるのはウイルスだけですから。そのウイルスの性質により、違う種の情報を取り込むことで、人類は進化を遂げてきた側面があるんです。

 

阿川:

    家出した子が、不良になって家をめちゃくちゃにすることもあれば、おとなしく家に帰ってきて「外の世界ってこんなんだよ」と教えてくれる場合もあるってことですか?

 

福岡:

    はい、ちなみにウイルスが帰ってくるとき、親である我々「宿主」は息子、娘が帰ってきたときに、こっそり扉を開けてあげているんです。

 

阿川:

    おかえりなさ~いって!?    親の情けか?

 

福岡:

    フッフッフッ。ウイルスってトゲトゲみたいなのがついてるでしょ。あれは不良化している間に身につけたパンクファッションのようですけど(笑)、あれをがっちり繋ぎとめる磁石のような「レセプター」を我々は持っているんです。それがないとウイルスは身体の中に入ってこられない。だから、わざわざ人間の側から、そういう磁石を用意して、いつ帰ってきてもいいようにしているんです。

 

阿川:

    あえてウェルカムにしていると。

 

福岡:

    もともとウイルスと宿主は共存関係にあったので、いつ帰ってきてもいいようにしているんですね。ウイルスはかつて我々の一部であったし、これからも一部であり続けるので、これを消滅せしめたり、打ち勝つというのはそもそもできないし、するべきでもない。

 

阿川:

    そうは言っても、家出パンク少年が帰ってきて家を無茶苦茶にすることもあるんでしょ?そういう悪ガキウイルスはどうすりゃいいの?

 

福岡:

    コントロールはできませんが、原理としては身体が過剰に反応しなければいいんです。ウイルスで重症化する人は、ウイルスが体内で悪さをしているというよりは「こんな不良が帰ってきた‼️」と大騒ぎしちゃってるんですね。それが前回もお話しした「サイトカイン・ストーム」という現象です。

 

阿川:

    免疫が暴走しちゃうという。それは体質の問題ですか?

 

福岡:

    それもありますし、老人になると免疫の調整能力が落ちる。運転でたとえると、逆走してしまうことが多くなる。

 

阿川:

    どこでブレーキ踏んでいいか分からなくなっちゃって。でも、元気な若者だって重症化することはあるでしょ?あれはどうして?

 

福岡:

    若者は免疫力がありすぎるゆえにアクセルを踏み込みすぎてしまうことがあるんです。とはいえ、多くの若者は悪者ウイルスを制圧できるように基本的にはなっています。

 

阿川:

    じゃあ結論としては、人類が科学の力で新型コロナウイルスに打ち勝ち、撲滅してやるという考えは間違っているんですね。

 

福岡:

    共存するというか、持久戦で押したり引いたりしながら、おとなしくなってもらえるよう、時間をかけて手なずけるしかありません。今年の秋にでもワクチンが開発されるかも、なんて報道がありましたが、そんな簡単ではないし、実用化するまでには相当な数の臨床治験が必要ですから、あまり期待しないほうがいいと思います。

 

阿川:

    ワクチンは前もって、体内に抗体を作ることによって発症や重症化を防ぐメカニズムだと理解しているんですが、今、話題になっているアビガンやレムデシビルといった薬はウイルスに対して、どういう役割を果たすものなんですか?

 

福岡:

    グッドクエスチョンです。コロナウイルスというのは、カプセルの中にRNAという遺伝子の一種が入っている。それが人間の体内に入ってくると、自らをコピーして増え続けようとするんですが、その際、ウイルスが持ち込んでいる酵素が働いてコピーが作られます。アビガンやレムデシビルはその酵素を阻害する働きがあります。

 

阿川:

    コピーが止める薬ってことですか?

 

福岡:

    ただし、人間の体内の正常な細胞も自身のRNAを複製するために同じような酵素を持っている。そのため、アビガンやレムデシビルは自分自身に対する刃になってしまうんです。それが副作用です。

 

阿川:

    正常な細胞内の酵素に悪影響が?    抗がん剤みたいなもの?

 

福岡:

    近いですね。だからこういった薬は慎重に取り扱わないといけないんですけれど、重症化したときの1つの選択肢としてはあり得るかなと。

 

阿川:

    1ヶ月ほど前、ハカセの連載エッセイに薬の話が書いてあって、「一定の効果があった」という科学者や専門家の言葉は、私たちからすると「効果あるんだ!やったー!」と楽観的になりがちだけど、実際には「思ったほど効かなかった」という意味なんですって?

 

福岡:

    一定というのは、「ほんのちょっとしかなかった」ということです。もし劇的な効果があったら、もっと喜ぶような表現になります。「卓効があった」とか「劇的に改善された」とか。

 

阿川:

    ははあ。仮にワクチンや薬が開発されたとしても、コロナウイルスって変異しやすいんでしょ?変異したら、そのワクチンは効かないの?    報道によると、「武漢型」もあれば、「ヨーロッパ型」もあって、すでに二種類のコロナウイルスが存在してるってことは、今後もっと変異したものが生まれる可能性があるんでしょ?

 

福岡:

    そもそもウイルスの変異って、ほんとにちょっとだけ遺伝暗号一文字とか二文字が書き換わっている程度なんですよ。

 

阿川:

    そうなの!?    整形の、ビフォーアフターみたいに大変身ってわけじゃないんだ。

 

福岡:

    たしかにアメリカで流行しているタイプと、最初に武漢で発生したタイプは何文字かが書き換わっています。それによって感染性に差があるんじゃないかと言われていますが、まだ全然立証されていないし、ウイルスにとってそのくらいの変化はよくあることなんですよ。

 

阿川:

    そうか・・・。今は世界中、過敏に捉えている傾向があるんですね・・・。

 

福岡:

    遺伝子が精密に調べられるようになったことの功罪はあるでしょうね。ウイルスの遺伝暗号の一文字、二文字の書き換わりは、いまや科学的にすぐに突き止められてしまう。そこに人間の注意がひきつけられちゃうわけです。すると、「この違いはなんだ?    もしかして病原性の違いなんじゃないか!?」とつい考えたくなってしまうのは分かりますけど。

    

阿川:

    条件は整った!    あいつが犯人に違いない!   みたいな話ね(笑)。

 

福岡:

    そうそう。まさに見込み捜査になりやすいわけです(笑)。なので、科学者も自ら戒めなければいけないし、それをニュースとして受け取る一般の人も気を付けてほしいと思っています。「これが怪しいぞ!」なんてストーリーがあると、人間はつい引っぱられてしまいがちですが、ちょっと冷静に考えたほうがいい。

 

阿川:

    科学は大切だけど、頼りすぎちゃいけない。

 

福岡:

    信用が寄りすぎるとよくないですね。その帰結として、個人も「データサイエンスによって行動すべし」となっていく可能性がある。今回のコロナ問題だと、スマホに専用アプリを入れて個々人の行動を把握できるようにしようという動きも一部ありますが、そんなことをしたら、それこそジョージ・オーウェルの小説『1984』みたいに、管理社会が強化されていくきっかけになってしまう。

 

阿川:

    日本でも、もうなりかけていますよ。先日の緊急事態宣言解除のときに安倍総理が、そういうアプリをもうすぐリリースすると言い出して。なんかイヤな予感がする。

 

福岡:

    そうなると、個人の行動とか、自由な生活、あるいはある種の道徳的な規範みたいなものまで制限される可能性がありますね。これはかなり注意しないといけないと思います。政府にあれこれ言われずに行動することが基本的人権のはずなのに、全部アプリでコントロールされ始めると、やがてマイナンバー等に紐づけされて個人がデータ化される可能性があるんじゃないかと危惧しています。国民の側も、自らそういう方向になびいて行ってしまう人も多いかもしれない。なにか言われたほうが楽だから。

 

阿川:

    政府が「おまえの命を守るためなんだ」という正義のエクスキューズの下に、人々を統括するのに一番いい手法だと気づいたんじゃないかと思うとすごく怖い。

 

福岡:

    人々の行動をデータ化して、「お前、こんなときに集まって麻雀をしていただろう」なんて言われちゃうとね(笑)。

 

阿川:

    「文春砲」より怖い(笑)。ハカセは前回の対談では、コロナに対して我々ができることは、「苦にしないこと」とおっしゃってましたけど、いまも同じ考えですか?

 

福岡:

    同じです。生物である以上、新型コロナウイルスに関係なく我々は明日死ぬかもしれないわけですよね。そう考えると、悪く考えるより、希望を持って生きたほうがいいんじやないかなと思うんです。

 

阿川:

    実際、自粛生活中にやっぱり強いなと思う人は、この不便さに文句を言うのではなく、笑っている人だと思うんですよ。

 

福岡:

    日本だと、「三密」を避けようと言ってるんでしたっけ?「密」の反対語は「疎」だから、疎外とか疎遠を楽しめる気持ちが必要なんじゃないかな。というのも、阿川さんも私もどちらかというと都会で生まれ育っているじゃないですか。

 

阿川:

    はい。

 

福岡:

    これは田舎の人を悪く言っている意図は全くないことを前提に聞いてもらいたいんだけど、都会は基本的には田舎の人間関係が嫌になった人が集まってきて作られた場所だと思うんです。つまり、なるべく他人にかかわらず、朗らかに生きて、ひっそり死ぬというのが都会の人の価値でしょう。

 

阿川:

    そお?   私はそうでもないけど(笑 )。

 

福岡:

    それなりにまた集まってきて、なにかムラ社会的なことをやるのは非常に愚かなことなので、この際、「疎」という価値を大切にしたほうがいいんじゃないかと思います(笑)。

 

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勉強になりました~😄

 

僕的な結論としては・・・

 

最低限の決まり(人前ではマスク。節目節目で手洗い。等)を守り、

 

笑顔で、くよくよせずに生きる❗

 

のようですね😉

 

今日も、ありがとうございました🙏